中野耕志 X テレフォトレンズ/スコープ PROMINARレポート

第4回
プロミナー500mmでパフィンを撮る
PROMINAR 500mm F5.6 FL / TX10

このサイトの作例写真はPROMINAR 500mm F5.6 FLで撮影しています。 

写真:パフィン

前回のPROMINARレポートではイギリスでのエアショーの模様をお伝えしましたが、そのエアショーの数日前には北海の小島で“パフィン”を撮影してきました。パフィン(Atlantic Puffin)は和名をニシツノメドリといい、北大西洋沿岸部に広く分布しています。北日本で稀に観察されるツノメドリ(Horned Puffin)と同じ仲間ですが、ツノメドリは太平洋に分布します。同じく太平洋に分布するエトピリカ(Tufted Puffin)もまた、パフィンの仲間です。

パフィンの島

写真:PROMINAR 500mm F5.6 FL

 イギリスの沿岸部の島にはパフィンの大きなコロニー(集団繁殖地)がいくつかありますが、中でもイングランド北東部沖のファーン諸島は、パフィンをはじめとする海鳥を観察しやすい場所として知られています。ファーン諸島は約20の小島で形成されていますが、そのうちステープル島とインナーファーン島に大きな海鳥のコロニーがあります。この島で繁殖するのはパフィンの他、ウミガラス、オオハシウミガラス、キョクアジサシ、サンドイッチアジサシ、ミツユビカモメ、ヨーロッパヒメウなどで、島に上陸すると間近で観察することができます。ファーン諸島に渡るには最寄りの港があるシーハウシズからのボートツアーに参加します。海鳥への過度な観察圧を避けるためステープル島は午前、インナーファーン島は午後のみ上陸が許可されています。ボートツアーはいくつかのコースが選べますが、バーダーにオススメなのはAll Day Birdwatchと呼ばれる、1日かけて2島を巡るコースです。現地での滞在時間はそれぞれ約2時間ずつと短いですが、それでもファーン諸島の海鳥を満喫するには十分といえるでしょう。

写真:ボートツアーの様子

 私が乗船したボートは午前10時に港を出港しました。乗り合わせたのは20人ほどのバーダーで、島影が大きくなるにつれて増えてくるパフィンやウミガラスなどの海鳥に皆興奮気味。そんな不意の出会いに備えていつでも撮影できる準備をしておきましょう。揺れる船からの撮影は難しいですが、時として船と同じ方向に飛んでくれることがあるからです。波しぶきをかぶる可能性 がありますので、プロミナー500mmが防塵防滴なのは安心です。とはいえ塩水がかかった場合はすぐに拭き取りましょう。

海バックで鳥を撮るときは、複雑な波の模様にピントが持って行かれるため、
オートフォーカスがうまく働かないことがほとんどなので、マニュアルフォーカスでの撮影が有利です。
パフィンなどのウミスズメ類は高速で飛翔するので、ファインダーに捉え続けながらピントを合わせ続けるのは至難の業です。
そこでピントリングに印字された距離目盛りを参考に、15m~20m程度にピントを合わせておき、鳥がその距離を通過するタイミングに合わせてシャッターを切る「置きピン」が有効です。

写真:海上を飛ぶパフィン 海上を飛ぶパフィンを手持ちで撮影しました。パフィンの飛翔はもの凄く速いので、鳥影を追いながらのピント合わせは難しいものです。そこでピントリングの距離目盛りを参考に15~20m程度の任意の距離にピントを合わせておき、その距離にパフィンが飛び込んでくるタイミングでシャッターを切る「置きピン」が有効です。飛翔写真を撮るときのシャッター速度は、1/1000秒以上にするといいでしょう。

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写真:断崖の上で休むパフィン 断崖の上で休むパフィンを至近距離から撮影しました。プロミナー500mmの最短撮影距離は3mで、500mmF4クラスよりも1m以上も近づいて撮影することができます。5m以内での近接撮影では羽毛の一本一本まではっきりと分かるくらいに写りますが、その分被写界深度が極端に浅く、よりシビアなピント合わせが求められます。

 約30分の船旅で最初の目的地であるステープル島に上陸します。
島の周囲の断崖で営巣するミツユビカモメやウミガラスを横目に見ながら急斜面を登ると、いました、パフィンです。
パフィンは崖の上の草地に穴を掘り,その中で繁殖しますが、多くの個体が草地上や海岸の岩場で休んでいます。黒い背中と白いお腹、そしてカラフルなくちばしとピエロのような顔つきが愛嬌たっぷりで、人気の高いのも頷けます。
この島のパフィンは驚くほど警戒心が弱く、そっと近づけば5m以内に近づくこともできますが、遊歩道以外には立ち入れないので今回は基本セットのTX10(500mm)で撮影しました。地上に降りて休んでいる個体を撮るときは頑丈な三脚を使用することでファインダー像を安定させ、正確に目にピントを合わせます。
プロミナー500mmの最短撮影距離は3m。近くにやってきたパフィンの表情に迫ってみましたが、テレマクロ的な使い方でも羽毛の一本一本までクッキリと解像してくれました。パフィンの撮影に夢中になっているとあっという間に時間が来てしまいました。再度ボートに乗り込み、インナーファーン島に向かいます。

  • 写真:撮影の様子

キョクアジサシを撮影

 インナーファーン島は草に覆われている島で、ここでは数多くのキョクアジサシが繁殖しています。
キョクアジサシは北極圏で繁殖し、非繁殖期を南極圏で過ごすという、最も長い渡りをする鳥として知られています。
日本でも稀に観察できますが、そんな憧れの鳥の、しかも綺麗な夏羽個体が乱舞しているのですから、興奮せずにはいられません。
キョクアジサシは地面に営巣しますが、私が島を訪れた7月上旬には既に飛翔能力を持った幼鳥がいました。
親鳥は海で小魚を獲ってきては、幼鳥たちに給餌していました。
親鳥が海から戻ってくるとき、幼鳥を探したり地面に降りるタイミングを見計らうために少しホバリング気味に低速で飛行するのですが、そのときが撮影のチャンスです。
撮影ポイント付近の遊歩道は幅が狭く、キョクアジサシの幼鳥が足下をうろついているので三脚の使用は控えて手持ちで撮影しました。
撮影の要領はパフィンの飛翔と同じで基本的に置きピンですが、ホバリング中はピントリングを回しピントを微調整して撮影しました。
ちょうど海バックで飛ぶシーンが撮れたのですが、このようなケースではレンズの性能が如実に表れます。
プロミナー500mmのように白い羽のエッジに色滲みが出ないのは、高画質レンズの証です。
また絞り開放付近で周辺光量の低下は目立たないので、海や空など単調な背景でも安心して使えます。
たくさんのキョクアジサシに囲まれた2時間もあっという間に過ぎ去り、充実感と疲労感を覚えながら島をあとにしました。

  • 写真:キョクアジサシ
  • 写真:キョクアジサシ
  • ホバリング気味に飛翔するキョクアジサシを捉えました。これは置きピンを応用しての撮影で、まず任意の距離にピントを置いておき、その距離の近くにいるキョクアジサシがホバリングを始めたらカメラを向けてファインダーに捉え、ピントリングを回して微調整します。多少の慣れが必要なテクニックですが、普段からの訓練でピントリングの回転方向や移動量などを体で覚えておくといいですね。

今回は海外探鳥編ということでパフィンの島に渡りましたが、海外旅行では移動が多い上に荷物制限があります。
そんなときは撮影機材を少しでも軽くしたいですが、画質は妥協したくないものです。
その答えの一つが、コーワのプロミナー500mmだということを実感する旅でした。