叶内拓哉の野鳥撮影カレンダー

季節ごとの"野鳥の撮り方"を詳しく紹介!

6月のテーマ
見晴らしのよい「草地」でウグイスやホオジロの仲間を撮る
写真・解説:叶内拓哉(野鳥写真家)

このサイトの写真はPROMINAR 500mm F5.6 FLで撮影しています。(一部を除く) 

6月から7月上旬は、草地を好む、オオヨシキリ、コヨシキリ、セッカなどウグイスの仲間や、コジュリンなどホオジロの仲間を撮影しましょう。森の中は緑が濃くなり、野鳥の姿を探すのは難しくなりますが、見晴らしのよい草地ならば撮影できる機会も多くなります。

ノビタキに代表される高原を好む野鳥も、ニッコウキスゲなどの花々とともに撮影できるこの時期が撮影のチャンスです。例えば、ノビタキは甲信越の高原と北海道の湿原などで撮影できます。セッカは関東以西の草地で普通に見られますし、コヨシキリは西日本では高地に棲んでいますが、東北では海岸近くの湿原に棲んでいます。

野鳥が撮れる草地は、高原や湿原だけではありません。河川や海岸に発達したアシ原(ヨシ原)も、野鳥撮影には最適です。場所によって撮れる鳥の種類はさまざまですが、まずは近場の草地から撮影を始めてみましょう。

写真:コジュリン 湿原に咲くニッコウキスゲのつぼみにとまり、大きくクチバシを開いてさえずるコジュリン。ホオジロの仲間で、夏羽の時期は頭巾をかぶったように頭が黒い(オスのみ)のが特徴です。オオジュリンに似ていますが、分布するエリアが狭く、絶滅危惧種に指定されています。青森県つがる市。PROMINAR500mmF5.6FL/TX10(500mm)で撮影。

河川のアシ原は野鳥の宝庫 よくとまる場所を探そう

写真:オオヨシキリオオヨシキリは、枯れ残ったアシの穂にとまってよく鳴きます。姿を見つけることができれば撮影は難しくありません。遠目に撮影しても雰囲気の良い写真になるので、ぜひ狙ってみてください。新潟県新潟市。PROMINAR500mmF5.6FL/TX10(500mm)で撮影

河原に広がるアシ原は、野鳥撮影に絶好のポイントです。前回は「ソングポスト」でさえずるオオヨシキリやコヨシキリについて触れましたが、今回は、さえずるばかりでなく、“なわばり”を守り、エサとなる昆虫などを補食するためにアシ原を訪れる野鳥についても書いてみます。

草地を好む野鳥にとって、アシ原は大切な生息場所です。昆虫や節足動物を捕食し、繁殖期には“なわばり”を形成し、見晴らしのよいポイントにとまり、自らの存在をアピールする場所でもあります。こうした行動をしばらく観察すると、頻繁にとまる場所があることに気がつきます。こうした“お気に入り”の場所には、一度逃げても必ず戻ってきます。戻ってくるときは、まっすぐに飛んでくることもあれば、アシ原の下の方を移動してきて、“お気に入り”のポイントに飛び上がることもあります。

草地は、こちらから野鳥を見つけやすいと同時に、野鳥からも見つかりやすい場所なので、鳥に警戒されない工夫が必要です。警戒心の強さは鳥の種類だけでなく、個体によっても違います。その鳥がよくとまる“お気に入り”の場所を見つけ、撮る位置が決まったら、ジッとして動かずに待ちます。このとき、人間のシルエットを消すため、布のようなものを被ることができれば、効果的です。

野鳥は体の小さいものほど警戒心が強い傾向にあります。草地を好む鳥の中でも特に小さなセッカは、通常、50mの距離で逃げてしまいます。追うと逃げてしまうので、“お気に入り”の場所を見つけ、ジッと待ちます。このように待ちかまえて撮る場合は、20mほどの距離までは近づけるでしょう。このとき、ブラインドを使えば、さらに近い距離から撮影することも不可能ではありません。とにかく動かず、人間のシルエットを鳥に見せないことが、草地で野鳥を撮るときの重要なポイントです。

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背景がスッキリした場所にとまったら絶好のチャンス

写真:ホオジロ 写真のホオジロは、海岸や河川敷に発達したアシ原などで撮れる身近な野鳥です。ひときわ背の高い草の先でさえずる姿を、縦位置で捉えました。鳥の姿を画面上方に置くことで、高さを感じさせることができます。東京都府中市。TSN-884 PROMINAR+TSN-PZ(680mm)で撮影。

草地を好む鳥は、“なわばり”を見張るために周囲より背の高い草の先にとまります。このとき無数の草が重なり合い、背景がゴチャゴチャしたものになりがちです。背景を整理し、きれいにぼかして撮るには、背景がすっきりとした場所を見つけることが重要です。

画面は横位置で撮ることが多いと思いますが、ここでは縦位置での撮影にも挑戦してみましょう。背の高い草花にとまる野鳥を縦位置で撮るときは、画面の上方に鳥を配し、画面に広く草を入れて撮ると、草の高さを印象づける表現ができます。このとき、鳥の顔が向いている方向に少し空間とる構図にすると、バランスのよい写真になります。

また、PROMINAR500mmF5.6FLは三脚座のレンズ固定部分のダイヤルを緩めることで、横位置と縦位置を瞬時に切り替えられるので便利です。しかも、レンズの光軸がずれないので、縦位置に切り替えたとき、被写体の姿を見失うこともありません。

なお、草の茎は風や鳥の動きによって揺れます。そのため、ピントを合わせても、次の瞬間には揺れて、ピントが外れてしまうこともあります。1度合わせて安心するのではなく、ファインダーをのぞき、ピントを微調整しながらシャッターチャンスを待ちましょう。

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高原に咲く花にとまる姿を狙って撮影する

写真:ノビタキ 高原の草地を好むノビタキ。シシウドやニッコウキスゲなどがよく似合います。警戒心が強いので、なかなか大きく撮ることができませんが、花とからめて風景的に狙うといいでしょう。北海道常呂町。PROMINAR500mmF5.6FL/TX10(500mm)で撮影。

初夏の高原に花を咲かせる草花は育つ速度が速く、ほかの草より背が高くなります。草原に立つと、ニッコウキスゲや、ハナウド、シシウドの花が目立つのは、この背の高さも影響しています。高原の主役ともいうべきノビタキは、見晴らしのよい場所を好み、美しく咲いた花にとまることも多いのです。

ノビタキもアシ原を好む鳥たち同様、“なわばり”を見張るため、同じ場所に何度もとまります。しばらく行動を観察して、よくとまる花を見つけたら、背景が煩雑にならない場所を探し、カメラを構え、ジッとチャンスを待ちます。ノビタキは警戒心が強いので、なかなか近づけません。近づくのが難しいと感じたときは無理をせず、背景を生かした“風景写真”的な狙い方をしてみましょう。

ノビタキがとまる花を中心に、背景を整理します。野鳥をアップで撮る写真は、大きく撮れれば、それほどフレーミングに悩むことはありませんが、アップで撮れないときは周囲も広く写るため、高度な計算が必要です。まず、狙った花の前後に邪魔なものが写り込まない角度を見つけます。ピントを花に合わせた状態でファインダーをのぞき、絞りを絞って確認してください。このとき、余計なものが画面に入っていれば、その障害物がはっきりと浮かび上がります。

撮影する位置が決まったら構図を組み立てます。花を画面中央に置くと「日の丸構図」という単調な写真になりがちなので、中心から左右いずれかに少しずらし、鳥がとまる空間を空けて構図をフレーミングします。このとき、鳥がいなくても写真として成り立つような構図になっていればベストです。ノビタキが狙った花にとまったら、顔の向いている方向に空間を少し空けるようにフレーミングを調整し、撮影します。

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初夏は花の咲く高原や河原のアシ原へ よく観察して枝先にとまる鳥を狙おう

写真:ヒバリ ヒバリというと、空高く舞い上がり、ホバリングしながら鳴くことで知られていますが、河原の草地や荒れ地などの地上を歩きながらエサを探します。そうした瞬間を狙います。東京都府中市。TSN-884 PROMINAR+TSN-PZ(680mm)で撮影。

初夏のこの時期、森の木々は葉を茂らせ、鳥の姿を探すのが難しくなります。そこで、この時期はニッコウキスゲやハナウドなどが咲く高原の草地や湿原、河原のアシ原で鳥を探しましょう。

撮影地では、まず、鳥の行動を観察して、よくとまる場所を見つけることです。その鳥の“お気に入り”の場所を見つけたら、撮りやすい場所でカメラを構え、動かずにシャッターチャンスを待ちます。観察力とジッと待つ忍耐力が、草地の野鳥を撮るために欠かせない重要なポイントです。

草地を好む野鳥は、自ら姿を見せ、自分の存在をアピールしてくれるので、彼らを警戒させない限り、撮りやすい撮影対象です。6月は長雨に悩まされる時期でもありますが、晴れ間を見つけて、高原や湿原、河原のアシ原に出かけてみましょう。

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