叶内拓哉の野鳥撮影カレンダー

季節ごとの"野鳥の撮り方"を詳しく紹介!

12月のテーマ
「冬の河川」で小鳥たちの生き生きとした姿を撮ろう
写真・解説:叶内拓哉(野鳥写真家)

このサイトの写真はPROMINAR 500mm F5.6 FLで撮影しています。(一部を除く) 

写真:ハクセキレイ
薄氷が張った路面にたたずむハクセキレイ。人の生活圏にも入り込む身近な野鳥です。
PROMINAR 500mm F5.6 FL TX10(500mm)+EOS7Dで撮影。

冬の水辺の撮影というと、湖や沼、公園の池に集まるカモがまず頭に浮かぶと思いますが、河川でも野鳥の姿を撮ることができます。全国にほぼ一年を通じて姿を見せるセキレイの仲間は、小さな水路から大きな河川まで、多くの水辺で見られます。

すばしっこいイメージのあるセキレイですが、川では周囲を見わたせる石や岩の上にとまるなど、行動パターンが読みやすく、撮影はそれほど難しくありません。草も枯れて、河原の見晴らしも良くなる“冬”は、河川を訪れる鳥たちを撮るのには、最適なシーズンだといえます。

石の上を移動しながら虫を探すセキレイを狙う

写真:キセキレイ 流れに顔を出す石の上に止まるキセキレイ。水の中に棲む昆虫を探しているのだろうか。
PROMINAR 500mm F5.6 FL TX17(850mm)+EOS7Dで撮影。

河川に現れる小型の鳥には、ハクセキレイ、キセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、イカルチドリ、イソシギなどがいます。キセキレイは上流、セグロセキレイは中流、ハクセキレイは下流で多くみられますが、流れの緩やかな川では、中・下流域で3種とも見られる場合もあります。イカルチドリは河原に砂礫(砂と小石の混じったもの)が広がる上・中流域、イソシギは河口を含む中・下流域を好みます。

彼らは主に水生昆虫や川面を飛ぶ昆虫などを採食しています。水深の浅い流れでは、水面に顔を出した石の上を移動しながら獲物を狙うので、その姿を撮るといいでしょう。石の上を移動する行動には一定のパターンがあり、しばらく観察していると動きが読めるようになります。あまり長時間、一か所に留まらず、次の石へと移動していきます。

鳥は基本的に風上に向かって飛ぶので、上流から下流に向かって川風が吹いているときは、止まっている石よりも上流にある石へ飛び移ります。セキレイを見つけたら、移動するコースを予測し、上流側に回り込むと、こちらに近づいてくるのを待ち構えて撮ることができるのです。

また、フレーミングの際には、画面中央に捉えるのではなく、顔が向いている方向を少し空けて撮るようにします。セキレイは突然、動くことがあるので、常に前方を少し空けておくと、急に飛んでも画面からはみ出す心配がありません。

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飛び立つ瞬間は絶好のシャッターチャンス

写真:イソシギ 護岸用のブロックから飛びたとうとするイソシギ。動きを読めるようになると、飛び立つ瞬間を狙うのは難しくない。
PROMINAR 500mm F5.6 FL TX10(500mm)+EOS7Dで撮影。

慣れてきたら、鳥が飛び立つ瞬間を狙ってみましょう。飛んでいるセキレイを捉えるのは難しいですが、止まっている石から飛び立つ瞬間は、それほど難しくありません。川の中では、石が顔を出している場所に止まります。あまりアップで狙わず、鳥の前方を広く空けておき、飛んだ瞬間にシャッターを切ります。最初はタイミングが合わないかもしれませんが、回を重ねるごとに、撮影のタイミングをつかめるようになります。

また、ファインダーをのぞきながら撮影のタイミングを計ろうとすると、シャッターを切るのがワンテンポ遅れる場合があります。このようなときは、ファインダーから目を外し、肉眼で見るほうが、タイミングを掴みやすいでしょう。シャッターを切るときは、シャッターボタンを押さず、ケーブルレリーズやリモコンを使うとブレを防げます。

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川での撮影の基本は順光、水面の映り込みにも気を配る

写真:セグロセキレイ 水の中をのぞき込むセグロセキレイ。順光で狙った水面には青空のほか、川岸の草の緑が映り込んで美しい写真が撮れます。
PROMINAR 500mm F5.6 FL TX17(850mm)+EOS7Dで撮影。

水辺の撮影で気をつけなければならないのが、背景の処理です。ゴミや邪魔な護岸などは、フレーミングを変えれば画面に入れずに撮ることも可能ですが、水面への映り込みを消すには撮影する位置を大きく変えなければならない場合もあります。

水面が広く映るときは、太陽を背にして順光で撮ります。順光では鳥の細かなディテールがしっかり写りますが、逆光で撮ってしまうと水面が白っぽく写り、鳥はシルエットになってしまいます。曇りの日は順光も逆光も関係なくなりますが、曇り空が水面に映り、美しくありません。水辺の撮影は青空が広がる晴天時に、順光で撮るようにしましょう。

レンズを向ける角度や高さによっては、川岸に生える木や草、対岸の建物などが、水面に映り込むことがあります。不自然でなければ、そのまま撮って構いませんが、あまりうるさいようであれば、撮影する位置を変える必要があるでしょう。

また、人工物などが水面に映り込んでも、川の流れでディテールがはっきりせず、色も邪魔にならないようであれば、逆にアクセントとして利用することもできます。例えば、不自然でない赤や黄色であれば、紅葉が映り込んでいるように演出することもできます。

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サギを見つけたら飛ぶ姿も撮っておきたい

写真:ダイサギ 水面近くをゆっくりと飛んでいくダイサギ。体が大きく、直線的に飛ぶサギの仲間は、横から狙えば、飛ぶ姿を撮るのは難しくありません。
PROMINAR 500mm F5.6 FL TX10(500mm)+EOS7Dで撮影。

川でセキレイの仲間やイソシギなどを撮影すると、目の前をサギが飛んでいくことがあります。水辺の小鳥を撮る合間に、サギの飛翔写真を撮ってみましょう。

冬場、川でよく見かけるサギは、コサギ、ダイサギ、アオサギの3種類です。いちばん大きなアオサギで全長93cmくらい、小さなコサギで全長60cmほどあります。いずれのサギもゆっくりと直線的に飛ぶので、ピントをすばやく合わせ、画面から外れないように気をつけながら飛ぶ姿を追えば、飛翔写真を撮るのは難しくありません。

横から飛ぶ姿を撮る場合は、ピントを一度合わせることができれば、そのままシャッターを切り続ければよく、いちばん簡単です。正面から向かってくるシーンでも、ファインダーでピントを確認しながらフォーカスリングを回し、何枚も連続して撮れば、数枚はいい写真が撮れるはずです。

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画面が単調にならないようにアクセントの石や背景にも注意

写真:イカルチドリ 背景が水面だけでも、適度な空間をとり、構図を工夫すると雰囲気のある写真になります。岩に止まり、こちらを振り向くイカルチドリ。
PROMINAR TSN-774+TSN-PZ(680mm)+EOS 40Dで撮影。

水辺の鳥を大きく撮ることばかり考え、水面をバックに石とその上に止まるセキレイだけを撮ると、画面が単調になってしまいます。周囲の石や水草なども画面に入れて、環境を写し込んだり、水面への映り込みを考え、順光で撮れる位置を探して撮るといいでしょう。晴れた日の順光であれば、水面が深い青色に染まり、鳥の姿を引き立てます。

また、水面に顔を出した石の上をピョンピョン移動するセキレイは、基本的に川風に向かって飛ぶので、下流から上流側へ移動します。この習性を理解したうえで川での撮影に臨めば、失敗せずに川辺に来る野鳥を撮れるでしょう。

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