叶内拓哉の野鳥撮影カレンダー

季節ごとの"野鳥の撮り方"を詳しく紹介!

11月のテーマ
「木の実」をついばむ野鳥の姿を撮ろう
写真・解説:叶内拓哉(野鳥写真家)

このサイトの写真はPROMINAR 500mm F5.6 FLで撮影しています。(一部を除く) 

写真:カワラヒワ
例年になく多くの実をつけたサルスベリで、実をついばむカワラヒワ。
PROMINAR 500mm F5.6 FL+TX17(850mm)+EOS7Dで撮影。

秋は実りの季節でもあります。10月下旬になるとカキ(柿)の実も色づきはじめ、熟す11月にはカキノキ(柿の木)にはたくさんの野鳥が集まってきます。

カキ以外にも晩秋に実が熟し、鳥が好む木がいくつかあり、こうした木のそばで待っていると、鳥が群れをなして飛んできます。果実を食べる姿、2羽で実をとりあう姿、枝から飛び立つ姿など、さまざまな野鳥の姿が撮れるのも、この季節の魅力です。

野鳥が好む果実をつける木は、平地にも多く、間近に鳥の姿を捉えることができるはず。落葉して、森や林の見通しがよくなるこの季節は、野鳥観察には絶好のシーズンでもあり、秋晴れの空の下、果実のなる木に集まる野鳥を撮影しましょう。

赤い実をつける木は鳥の姿がよく映える

写真:ツグミ ハナミズキの赤い実を食べるツグミ。クチバシに実をくわえた姿を狙います。紅葉も美しく、鳥の姿が映える木です。
PROMINAR 500mm F5.6 FL+TX10(500mm)+EOS7Dで撮影。

赤い実をつける木は数多くありますが、その種類によって鳥の集まり方もまちまちです。その中で、もっとも人気の高いのがカキノキです。大きな実をつけるカキには、大小さまざまな鳥が来ます。ヒヨドリ、ムクドリ、オナガ、ツグミ、意外なところではアオゲラも好んでカキの実を食べます。

果肉たっぷりのカキの実は小さな鳥にも人気があります。筆頭はメジロ、冬鳥のツグミやジョウビタキたちもカキを食べに来ます。なお、渋柿であっても、鳥はかまわず食べるようです。クチバシでつつき、その部分が傷んだ頃に再び現れ、その部分から実を食べることもあります。

次いで、鳥が好むのがハナミズキとマユミです。ハナミズキはミズキ科の落葉小高木で、街路樹や庭木によく使われています。10月には赤い小さな実がひとかたまりになってつきます。ヒヨドリ、ツグミ、ジョウビタキなどがよく来ます。

マユミはニシキギ科の落葉低木で、成熟すると果皮が裂けて、中から赤い実が現れる朔果(さくか)が特徴です。メジロやコゲラ、コガラ、ハシブトガラなどの小型の鳥に好まれています。

カキノキは、実がなっていれば、すぐに見つけられますし、ハナミズキやマユミは図鑑などで調べて、探すといいでしょう。

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黒い実を好む鳥たちを撮ろう

写真:アカハラ キハダの実を食べるアカハラ。キハダはミカン科の一種で、直径1cmほどの小さな緑色の実をつけ、これが熟すと黒くなります。
PROMINAR 500mm F5.6 FL+TX17(850mm)+EOS7Dで撮影。

黒っぽい実も野鳥は好んで食べます。代表的なものとして、キハダ、カラスザンショウ、ムクノキ、エノキ、ハゼノキなどが挙げられます。キハダはミカン科の落葉木で、球形の実をつけ、熟すと黒くなります。ミカン科特有の強い香りがあり、ヒヨドリ、ツグミ、アカハラなどがよく食べにきます。カラスザンショウも同じミカン科で鳥に好まれていますが、朔果と見かけは異なります。

公園によく植えられるムクノキの実も鳥たちの好物です。ニレ科のムクノキには、直径1cmほどの実が11月ごろ熟し、オナガやキジバト、ヒヨドリ、ツグミがやって来ます。同じニレ科のエノキも身近な木です。このエノキも熟すと黒くなる実をつけ、オナガやヒヨドリなどに好まれます。いずれも大きめの公園であれば、どこにでもある木なので、すぐに見つけられます。

丘陵地などに見られるウルシ科のハゼノキにも鳥はやってきます。熟すと淡い褐色になる扁平な球形の実は、脂が多く、高カロリーで、多くの鳥が食べに来ます。ヒヨドリやムクドリはもちろん、メジロやシジュウカラ、コゲラ、ツグミ、ジョウビタキ、アトリの仲間も好みます。

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一度逃げても戻ってくるので根気強く待って撮ろう

写真:ヒヨドリ モクセイ科の常緑高木、トウネズミモチの紫黒色の実を食べるヒヨドリ。この実は漢方では強壮剤として使われるそうで、栄養満点のようです。
PROMINAR 500mm F5.6 FL+TX10(500mm)+EOS7Dで撮影。

木の実は豊富な糖質や脂を含んでおり、野鳥にとって晩秋から初冬にかけての大切な栄養源です。群れをなして木にとまり、一心不乱に実をついばむ姿を見ることができるのは、この時期ならではです。鳥を撮影しようと近づき、逃げられてしまうこともありますが、ご馳走を食べずに逃げ去ることはありません。しばらくすると、様子をみて戻ってきます。

鳥に逃げられても、がっかりせず、その鳥がいやがらない距離を見つけ、その場所から木に戻って来るのを待ちます。小さな鳥はクチバシに実をくわえるとすぐに飛んでしまうこともありますが、根気強くシャッターチャンスを待ちましょう。

野鳥を撮るときは観察することが大切です。鳥が好む実を見つけることはもちろん、同じ種類の木でも、鳥が実を食べに来る木と実がなっているのに1羽も食べに来ない木があります。よく観察して、その木が鳥の来る木か、来ない木か見わけることも忘れてはなりません。

また、実のなる木は人家の近くに多いので、撮影時には周囲の住民に不快に思われないような配慮が必要です。よその家の庭木にカメラを向けるのはマナー違反ですし、畑の真ん中に立っている木であっても、カメラの向きによっては、遠く離れた家の方から苦情が出ることも考えられます。もし可能であれば、近所の方に声をかけておけば、不審に思われずに済むでしょう。

なお、木の実はものによっては、年明けの1月ごろまで残っていることもあります。木の実に来る鳥は、11月だけでなく、12月、1月と撮影することはできますので、ぜひ撮影に挑戦してみてください。

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