叶内拓哉の野鳥撮影カレンダー

季節ごとの"野鳥の撮り方"を詳しく紹介!

10月のテーマ
峠や岬の上空を優雅に舞う「タカの渡り」を撮ろう
写真・解説:叶内拓哉(野鳥写真家)

このサイトの写真はPROMINAR 500mm F5.6 FLで撮影しています。(一部を除く) 

写真:ハイタカの幼鳥
本州以北で繁殖し、越冬のために暖地を目指すハイタカの幼鳥。青空をバックに体の下側をみせるハイタカを下から見上げるように撮影します。
PROMINAR 500mm F5.6 FL TX17(850mm)+EOS7Dで撮影。

秋は渡りの季節。中でも大きな翼を広げ、ダイナミックに上空を飛ぶタカは、誰もが挑戦してみたい被写体です。タカの渡りは9月中旬頃に始まり、10月、11月と続きます。

渡りをするタカの仲間として有名なのがハチクマとサシバです。北から南へと移動しながら数を増やし、越冬地である東南アジアへと渡ります。また、冬鳥として北から渡ってくるノスリも、渡りルートに乗って、全国に飛来するタカの仲間です。

タカが飛ぶ姿をしばらく観察すると、羽ばたき飛行と羽ばたかない滑空とを繰り返していることに気づきます。また、上昇気流を利用して同じ場所を旋回しながら高度を稼ぐシーンを見ることもあります。この翼を大きく広げて滑空しているときは、絶好のシャッターチャンスです。晴れわたる秋空をバックに、優雅に空を舞うタカの姿を撮影してみましょう。

タカが渡るルートや観察地を知ることが第一歩

タカの渡りの主なルートと観察地 主なタカの渡りのルートは2つ。
1つは北海道から本州へは竜飛岬を経由し、日本海側を南下します。新潟県の中越エリアから内陸に入り、長野県の乗鞍にある白樺峠を通ります。さらに、琵琶湖南岸、瀬戸内海を抜け、九州を横断し五島列島を渡ってゆきます。
もう1つは東日本各地から伊良湖岬を通り、紀伊半島、四国を横断し、愛媛県の佐田岬や由良半島を経て、九州へ入ります。サシバはそのまま南西諸島を経由して東南アジアへ、ハチクマは五島列島から中国大陸へ渡り東南アジアを目指します。

タカの渡りを撮る場合は、まず渡りのルートと観察地を知ることが重要です。主なルートは2つ。1つは北海道から竜飛岬を経由し、日本海沿いに南下し、長野県の白樺峠から西へ向かい瀬戸内海を抜けて、九州、東南アジアへと至るルート。もう1つは関東地方から伊豆半島などを通り、伊良湖岬から紀伊半島へ渡り、四国を横断して九州へ入るルートです。

概ねこのルート上をタカが次々と飛んでゆくわけですが、ルート上ならばどこでも撮れるというわけではありません。ルート上にある標高の高い山の上や岬など、上空のタカが間近に見えるポイントが撮影に適しています。

具体的には、青森県の竜飛岬、長野県の白樺峠、愛知県の伊良湖岬などが知られています。渡りのピーク時には数百から数千羽が群れをなすこともある有名ポイントは、撮影に最適ですが、タカの渡りの調査・観察を行う全国組織「タカの渡り全国ネットワーク」のwebサイトにリンクされている全国各地の観察地でも、撮影できます。

「タカの渡り全国ネットワーク」
http://www.gix.or.jp/~norik/hawknet/hawknet0.html

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雲台が上下左右自由に動くようにして撮影しよう

写真:サシバの幼鳥 伊良湖岬の上空を舞うサシバの幼鳥。ファインダーをのぞきながら雲台を動かし、サシバの姿を追った。距離はあるが、翼の背側、顔の部分がはっきりと写っている。
PROMINAR 500mm F5.6 FL TX17(850mm)+EOS7Dで撮影。
ビデオ雲台 飛んでいる野鳥を撮るときは、雲台の動きがカギを握る。ロックレバーをゆるめてもレンズがお辞儀しないカウンターバランス機能のあるビデオ雲台が使いやすい。上空のタカを狙うときは、写真のように雲台が上を向くようにパン棒の角度を調節する。

超望遠レンズでタカの飛行写真を撮るときは、しっかりとした大きめの三脚とビデオ雲台の組み合わせがベストです。ビデオ雲台はロックレバーをゆるめ、上下左右がスムーズに動くようにします。こうすると、空を飛ぶタカの姿を追いながら撮ることができます。

このときカメラのファインダーにタカの姿をとらえながら、ピントを合わせて撮影します。最初はうまくピントが合わないこともありますが、遠くを飛んでいるタカであれば、すぐにピントが合うようになります。ピント合わせが上達したら、近づいてきたタカにも挑戦してみましょう。

頭上を飛ぶタカは、レンズを上に向けて撮ります。このとき、雲台を上に向けようとするとパン棒が三脚の脚にぶつかって上を向かないことがあります。このときはパン棒の取り付け角度を変えたり、パン棒を取り付ける向きを変えて、レンズが十分、上を向くようにします。

また、頭上にレンズを向けるときは、三脚の脚を十分伸ばして、無理な姿勢をとらずにファインダーをのぞけるようにすることも快適に撮影するポイントです。そのためには、撮影者の身長と同じくらい伸長をもつ三脚を使うのが理想です。

なお、三脚を使わずに、手持ちで撮影する方法もあります。この場合、PROMINARの三脚台座が邪魔になるので、台座が上にくるように角度を変えたり、三脚台座を外すことで、レンズ部が持ちやすくなります。

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明るい空をバックに撮る飛行写真は露出に注意

写真:チゴハヤブサ 伊良湖岬の上空を飛び去るチゴハヤブサ。陰となる体の下側が暗くつぶれないように+1補正をかけて、明るめに撮影しました。
PROMINAR 500mm F5.6 FL TX17(850mm)+EOS7Dで撮影。
タカの飛ぶ姿を撮るときは、ISO感度は400~800、シャッター速度は1/1000秒以上に設定し、露出補正は+1を基準にする。

タカの飛行写真は、主に晴れた日に撮影します。朝早くに撮ることもありますが、日が昇り、十分光量のある条件での撮影が多いので、速いシャッタースピードで撮影できます。移動する被写体を撮るため、シャッタースピードは最低でも1/1000秒、できれば1/2000秒以上は確保したいものです。

速いシャッタースピードで撮影するために、カメラのISO感度は400程度に設定するといいでしょう。明るさに応じて感度を上げてもいいですが、高くしてもISO800程度にとどめておいた方が、描写への影響も少ないと思います。

露出は光の当たり方、背景の様子によって調節する必要があります。上にあるサシバの幼鳥の写真は、太陽の光が当たる背の部分(体の上側)が見える角度(順光)で撮っており、背景も雲ひとつない青空なので、露出補正せずに適正な露出が得られました。一方、左の写真のように体の下側が見える角度(逆光)で撮る場合は、+1補正しないと、体の陰になった部分が黒くつぶれてしまいます。さらに、曇った空や白い雲をバックにとるときは、注意しなければなりません。+1補正を基準に、必要に応じて、+1.3、+1.6の補正をかけます。

もしも露出補正値を決めるのが難しいと感じられる場合は、マニュアル露出を選び、地上の風景などに露出を合わせておいて撮る方法がいいかもしれません。

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タカの仲間の飛行写真は渡り以外にもチャンスはある

写真:ミサゴ 広い河川の河口付近に生息するミサゴ。水中の魚を捕るため同じ場所を旋回する姿をよく見かけます。獲物を見つけるとホバリングして、水面に向かって急降下します。
PROMINAR 500mm F5.6 FL TX17(850mm)+EOS7Dで撮影。

渡りをするハチクマやサシバ、ツミ、ノスリ、ハイタカ、チュウヒなどは、タイミングを逃すと撮れなくなりますが、タカの仲間には渡りをせずに国内に留まる留鳥もいます。ミサゴ、トビ、オオタカ、ハヤブサ、チョウゲンボウなどは、一年中撮ることができるタカ科の鳥です。

特にミサゴやトビは全国の海岸、川の河口近くで、旋回する姿を見ることができます。同じ場所を何度も旋回する様子を狙うことで、飛んでいる姿をファインダーで追い、ピントを合わせる技術を磨くために役立てるのもいいかもしれません。

とまっている鳥に比べ、撮るのが難しい部分もありますが、鳥の飛ぶ姿は、もっとも野鳥が輝いて見える瞬間です。繰り返し撮影することで飛行写真のコツをつかみ、タカの生き生きとした姿を撮ることに挑戦しましょう。

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