叶内拓哉の野鳥撮影カレンダー

季節ごとの"野鳥の撮り方"を詳しく紹介!

7月のテーマ
山野の鳥が姿を隠す夏は水辺で「サギ」を撮ろう
写真・解説:叶内拓哉(野鳥写真家)

このサイトの写真はPROMINAR 500mm F5.6 FLで撮影しています。(一部を除く) 

写真:アオサギ
湖沼や池などの近くには水田地帯が広がっていることが多い。水田にはカエルやドジョウなどがいることがあるので、サギ類の撮影には最適な場所である。
PROMINAR 500mm F5.6 FL+TX10(500mm)で撮影。

夏は野鳥撮影が難しくなる季節です。繁殖期が終わり、7月末ともなると換羽期(羽毛が抜け替わる時期)に入り、鳥たちは目立つ場所に出てこなくなります。森を歩いても、さえずる声は聞こえますが、姿を見ることは少なくなります。

一方、水辺に目を転じると、サギの仲間が活発に動き回る様子が見られます。ダイサギ、チュウサギ、コサギなどの白いサギが河川や水田などでエサを探しますし、海岸や干潟ではクロサギを、池や沼などでは小型のヨシゴイを見ることがあります。

なお、水辺にいる姿や水田に立つ姿をそのまま撮るだけでなく、エサを獲る瞬間や飛び立つ瞬間など、生き生きとした姿を狙うと、写真が動きのあるものになります。また、ハスの花が咲く池や沼では、鮮やかな花を画面に取り込んで季節感を出すようにすると写真が一層引き立ちます。

白いサギは昼間に動き回るが色のついたサギは夜行性が多い

写真:コサギ 川の浅瀬で捕まえた魚(オイカワ)をくちばしにくわえたコサギ。河川では近づいて撮るのは難しいですが、少し見下ろす位置から撮ると、背景を水面にでき、スッキリとした画面になります。東京都府中市。
TSN-774 PROMINAR+TSN-PZ(680mm)で撮影。

国内で見られるサギの仲間は18種ですが、その中で体が白いものは、いずれも昼行性です。これに対して、色のついたサギは夜行性ものが多いようです。白いサギとして代表的なものがダイサギ、チュウサギ、コサギです。一方、色つきのサギといえば、ゴイサギやアオサギです。夜行性といっても朝夕は活動しますし、アオサギの場合は繁殖期になると昼間でも採食行動をとります。

サギの仲間はエサとなる魚やザリガニのいる河川や水田などで見かけることが多いのですが、近づこうとすると飛んで逃げてしまいます。そこでサギは、まず公園の水辺で撮ることをお勧めします。河川や水田などでは、なかなか近づかせてくれませんが、公園の池で見られるサギは、人慣れしていることもあり、近づいても逃げません。また、7月ごろは、巣立って間もない若い個体も多く、警戒心が弱いこともあり、撮りやすいでしょう。

サギに限らず、野鳥は全般的に獲物を狙って、ジッとしているときは、ほとんど動かないのでピントを慎重に合わせることができます。被写体ブレを起こす心配も少ないので、シャッター速度が遅くなりがちな朝夕でも安心して撮れます。

ただし、ジッとしている姿ばかりでは面白みに欠けるので、エサを獲る瞬間やクチバシにエサをくわえた姿を狙うと、写真に動きが出てきます。この場合は、シャッター速度が遅いと、ぶれることがありますので、シャッター速度に注意しながら撮りましょう。

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ハスの花が咲く池や沼は絶好の撮影ポイント

写真:ゴイサギの幼鳥 写真はゴイサギの幼鳥、別名「ホシゴイ」。ゴイサギは夜行性で、昼間は水辺の茂みでジッとしていることが多いのですが、エサを求めて歩きまわることもあります。このとき、周囲のハスが花を咲かせていましたが、両者が画面になかなか収まりませんでした。でも、水面に花が映る場所を見つけ、その場所にホシゴイが来るのを待って撮影しました。新潟県阿賀野市。
TSN-884 PROMINAR+TSN-PZ(680mm)で撮影。

公園の池や沼は、サギを撮影するには最適な場所です。特にハスが繁茂する池は小魚やザリガニが多く棲み、サギにとって絶好のエサ場となっています。ハスというと、小型のヨシゴイが、葉の上を歩きまわったり、水面から立ち上がるように伸びた茎につかまる姿が知られています。中型のゴイサギやコサギも、ハス池に姿を見せることがよくあります。

美しい花を咲かせるハスは、夏を感じさせてくれるとともに、写真のよいアクセントになるありがたい存在です。花のピンク、葉の緑が画面に加わることで、主役となる鳥の姿を引き立ててくれます。ハスの花が咲く池には、ヨシゴイ、ゴイサギをはじめ、コサギやチュウサギなど、さまざまなサギがエサを求めて集まってくるのです。

なお、ハスの葉がびっしりと茂った池は、ハスの花を撮るのにはいいですが、サギを撮るには茂りすぎです。サギの姿を見つけにくいうえ、絵になりません。水面が見える程度にハスが繁茂した池を選ぶことも、撮影のポイントです。このようなハス池では水面が水鏡となり、そこに映ったサギや花を作画に利用することも可能です。

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水辺でエサをとる瞬間や飛び立つ瞬間を狙おう

写真:チョウサギ 新潟県阿賀野市。
TSN-884 PROMINAR+TSN-PZ(680mm)で撮影。

サギがジッとたたずんでいる姿が撮れるようになったら、次は動きのあるシーンに挑戦してみましょう。1つはエサを獲るシーン。水面を見つめ、ジッとしていたら、獲物を探しているはずです。あらかじめピントを合わせ、視線の向いている方向を少し空けておき、シャッターチャンスを待ちます。もし、捕食する瞬間が撮れなくても、サギは魚をすぐにのみ込まないので、魚をくわえた姿を撮ることができます。

もう1つは飛び立つシーン。静止状態から飛び立つ瞬間は、飛ぶ方向を予測してシャッターを切れば、簡単に撮影できます。いつ飛び立ってもいいように、顔が向いている方向を空けて待つようにします。野鳥は飛び立つ瞬間にフンをすることが多いので、これを飛び立つサインと捉えるといいでしょう。また、サギの場合、飛行中は首をS字に曲げますが、飛ぶ直前、縮めていた首を伸ばします。首を伸ばした状態で、少し身をかがめるようにしたら、飛び立つサインです。

サギに限らず、鳥は風上に向かって飛びます。そこで、とまっているサギの風上側の空間を空けて待ちます。こうすると、飛び立つ瞬間に慌てず撮ることができます。飛んでいるサギの姿を追って撮るよりも、飛び立つ瞬間のほうが撮りやすいのでお勧めです。どうしても、飛び立つ瞬間を捉えられないのであれば、連続撮影機能を使い、連写した写真から狙いどおりの写真を選び出します。

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近距離で大きく撮れる公園ではカメラワークを駆使して撮ろう

写真:ヨシゴイ 冬になるとハクチョウの餌付けが行われるこの人造湖では、小型のヨシゴイも画面からはみ出すほど近距離で、大きく撮れます。そこで、印象的な目と細いクチバシに重点を置き、顔の周辺をアップで撮りました。新潟県阿賀野市。
TSN-884 PROMINAR+TSN-PZ(680mm)で撮影。

冬のカモと夏のサギは、いずれも初心者にも撮りやすい被写体です。両者を比べると、夏のサギのほうが細かい動きが少なく、ジッとしていることが多いので、より撮りやすい野鳥だといえます。

また、サギの仲間は河川や田んぼ、干潟などでよく見かけますが、近づいて撮ろうとすると逃げられてしまいがちです。その点、公園の池にいるサギは、人慣れしていて近い距離から撮ることができます。さらに、ハスが繁茂していて、花が咲いていれば、腕の見せどころです。

公園の池でサギを撮るとき、近すぎて、画面に全身が収まりきらないこともあります。そんなときは、頭を切り替え、顔のアップを狙ったり、羽毛の質感がわかるくらいアップで翼の部分を撮ったり、特徴のある細くて大きな脚をクローズアップ撮影したり、カメラワークを駆使して撮影を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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